日本は、敗戦後の廃墟から奇跡的な復興を遂げ、高度経済成長を実現させて経済大国としての地位を築き上げてきました。
その後、日本の競争力が鈍化していく中、中国に追い越され、ドイツとの差は縮まり、インドの猛追を受けるなど、世界経済における日本の存在感の低下が指摘されています。
国内では、少子高齢化、地方から都市部への人口流出、農林水産業等の第一次産業の担い手不足、経済的格差等、喫緊の課題が山積しています。
また、地政学的には拡大する中国覇権の最前線に位置し、緊迫する朝鮮半島情勢の影響を直接受けるリスクに加え、ウクライナに軍事侵攻したロシアとの間では領土問題を抱えるなど、目が離せない情勢にあります。
このような現状・背景に鑑み、文化を柱に「平和的な課題解決の取り組み」を推進します。
文化安全保障とは決して新しい概念ではありません。ソフトパワーの一種で、対抗措置ではなく、日本の文化を交流手段として国際交流を促し、国家間のコミュニケーションを円滑に進め、世界平和に貢献することができます。(他にも、国際オリンピック委員会(IOC)が、平和と開発のためにスポーツを利用することを積極的に推進しており(1) スポーツなどを手段として平和を推進する取り組みがあります)
また、文化安全保障は国際文化交流を通じて国家間の人々の理解を深め、友好的な関係を作る効果が期待できます。国家間の緊張が高まる中、世界平和に資する概念となります。
長い歴史の中で育まれてきた日本の文化は、祭をはじめ工芸や食などの伝統文化、アニメや現代アートなど多岐に渡ります。これらを活用して国際交流を促進し、国家間ので民間レベルのコミュニケーションを活性化させることができます。これらの活動は、日本国内だけではなく、各国においても軍事的な衝突を避けるだけではなく、ビジネス環境にも貢献できます。例えは、野村インターナショナルの中国支店は「中国と外界とのビジネスや民間交流の不足は、中国の今後の経済成長に深刻な影響を与える可能性がある」と述べています(2)。
脚注
(1) IOC ウェブサイト(https://olympics.com/ioc/peace-and-development)(2) The Economist, "Ties between foreign businesses and China go from bad to worse"https://www.economist.com/business/2023/09/26/ties-between-foreign-businesses-and-china-go-from-bad-to-worse?etear=nl_today_4&utm_id=1788868文化安全保障の概念は政府のみが取り入れるものではなく、我々民間が自身のルーツを確認し、そのアイデンティティーを元に、生活、コミュニティー、商いなどの日常生活を通し、世界に貢献していく概念と位置付けています。